Q2B Tokyo 2023に参加しての感想
この看板はコンファレンスの受付の上に貼ってあったもの。
2日間のQ2B Tokyo 2023を終わって。簡単な感想を書いてみる。参加前の感想と参加後はどのように変わったか。
- 思ったよりたくさんのセッションがあり、できるだけたくさん参加するのに疲れた。
- 改めて、日本のQCは慶応が最初にIBMの実機を使えるようにして、日本の数社をメンバーいしたことで、日本の本格的なQC時代が到達した。しかし、それはクラウドを介してのアクセスであり、その後IBMが実機を東大用に搬送した。
- そして、今年理化学研究所が日本発の国産QCを制作してクラウドによるアクセスを可能にした。自分の国で自前のQCが作れるのは大きな進歩だ。
- つい以前まで、NISQとFTQCにはどうにもならない溝があり、このままでは、NISQのまま立ち枯れてしまうのではないかと危惧された。しかし、研究者はそこで立ち止まらない。この溝を埋めるために、新しいgateを考えだして100万Qubitでなく1万Qubitでなんとかなるようにしたり、エラー処理に取り組む数社が発表したが、世界にはもっと多くの会社がエラー処理に取り組んでいるだろう。
- 2030年にエラー処理がなんとかなるというのが一人歩きしているが、業界を見ると立場は違えども意外に整合している。例えば、BCGの予想と富士通の「初期FTQC」は以下のように重ね合わせてみるとうまく説明できる。
富士通の佐藤博士のスライドを右に90度回転させて、BCGの渡辺氏のスライドと結合して、筆者が図を追加してみた。ちょうど2025年辺りから2035年の間に初期FTQCが起こり、その後成熟して2040年にはFTQCとして完成するというのが良く分かる。
- 3つのパネルでは、皆手探りで始めたが、協力できるところは協力して(ここは日本特有な傾向なのかもしれない)進めている。そして、いつものになるかわからない中、今のままではダメだという強い信念を感じてQCに取り組んでいると感じた。また、技術だけではQCが進歩にならず、監督官庁などの理解も必要で、QCにあった規制や法律の設定も必須である。また実際に実機を使って実際に手を動かすのが必要。
ここでで、余談モードオン。大学の専門は電気だった所謂EE。電気の建物の隣は情報工学で、その向かい側は計算機センターだった。時は、1970年代の半も行かない頃。もちろん、カードで入力。しかし、それは、情報工学の学生に与えらた特権。電気の学生は「計算機演習」というクラスがあったが何をするかと言うと、紙にコードを書いて計算機に入れた気持ちになって終了。この演習で身についたものは何もなかった。その後米国の大学に行ったら、学内にいくつもののTime Shareのターミナルがあって24時間アクセスできた。流石に、ビデオではなく、本当にタイプライタータイプだった。プログラムの宿題があって例題を打ち込んでいるだけなのに、Compilerは無常に弾くし、実行するとエラーで泣きたくなった。深夜まで。。。しかし、そうやって得た経験と知識はその後に大きく役立った。実際に実機で自分の手を動かさないと自分のものにはならない。余談モード オフ。
写真の出展はComputer History Museum
- 既にQCに飛び込んだ会社は、既にUse Caseを持ち、古典で計算できない中、QCの応用を考えた。最初はどう取り組んで良いかわからないので、コンソーシアムに参加したり、スタートアップと協業などで、必要な最小限度の知識を取得。社内に数学、物理、情報の背景がある人が多いとQCへの移行は比較的容易かも知れない。この発言が筆者の心に刺さった。「FTQCは10年後かも知れないし、20年後かも知れない。しかし、来年になったら、5年と言われるかも知れない。」「その時になって使いこなそうとしても、簡単には行かない。だから、今する!!」
- 協賛がQunasysで、それが大阪大学のspin-offであることだけでなく、このコンファレンスでは、広く大阪大学とその関連組織が目立った。東京集中の日本で、東京から離れた大阪をベースにする大阪大学の活躍を歓迎する。
- その他、このコンファレンスでは、英国や韓国のQCの動きも発表された。EU脱退の後の英国は広く世界と連携することを目指しているようだ。
このコンファレンスに関して書いたブログのリスト
最後にこのコンファレンスに関して書いたブログのリストを貼り付けて終わる。流石にもうガス切れ。ここ残りは、エラー処理とNvidiaのGPUの話がどうQCに関わってくるのかを書けなかったことだ。
- 第二回Q2B東京が7月19日と20日に開催!!
- Q2B東京2023年に参加しての雑感、その1
- Q2B東京2023年に参加しての雑感、その2
- Q2B東京2023年、伊藤公平先生の基調講演
- QuantinuumのQCビジネス
- Q-CTRL, CEOのMichael Biercuk教授はError SuppressionこそFTQCへの道だと主張
- ClassiqはハイレベルのQC仕様から環境に応じて最適な解を出力する技術を提供
- 富士通とQC by 佐藤信太郎博士
- 量子業界が掲げるビジョンと苦悩、by 楊天人氏、CEO Qunasys
- QC:金融業界のQ2B Tokyo 2023 パネル
- 大阪大学とQC
- UK(英国)のQC
- QCの優位性(Quantum Advantage), QC超越性(Quantum Superemacy)はいつ起こるのか?
- Q2B Tokyo 2023: McKinseyのQuantum Technology Monitor
- Q2B Tokyo 2023: 自動車業界とQCのパネル
- Q2B Tokyoに参加しての感想