UK(英国)のQC

Q2Bは米国発祥だから、当然米国の話が多い。今回はUKからの参加社も数社あり、またUK政府からの発表者もいた。そんな、セッションに参加してみた。何せ、米、英、加、豪、新西蘭(New Zealand)はアングロサクソン文化・言語陣営なので、研究結果や人材の往来も多いだろう。事実米国人で、豪の会社・大学に属している研究者も多い。(例えば、前出のQ-CTRL, CEOのMichael Biercuk教授や、GoogleからSilicon Quantum Computingに移籍したJohn Martinis氏など。)

正直初めから、このセッションに出る気はなかった。ところが、朝飯を食っていると、愛想の良い中年のおじさんがニコニコしながら近づいてきて、ここで一緒に食べても良いかというので、もちろん断る理由もないのでOKした。この人は英国のQC技術を売り込む英国政府の人だった。前日もウロウロして片っ端から人に話かけていて、複数のセッションでも必ず最後に質問をするという感じで。目立っていた。そうか、そういうミッションだったのかと納得した。後で、セッションの時写真を撮ったが、映りが悪かったので、朝飯の時の写真を貼っておく。

Phillip White氏、英国政府のTechnology Specialist, UK Department for Business and Tradeのディレクター

話によると、日本語が少しできるのは奥さんが日本人で滋賀県出身とか。Cambridge大学卒でQC技術もそこそこ分かるとか。

では、プレゼンの内容に。。。。

まず最初にQC関連の英国の国立の4つのhubを示した。

色々やってるなあという感想。イメジング、QCとシミュレーション、センサーとタイミング、そしてコミュニケーション全て揃っている。

米国の地理には感覚があるが、英国のはさっぱりだが、日本同様小さな国なんで、それほど複雑ではないが。それを地図で示した。とにかく色々な組織があって全部網羅してお互いの関係がよく分かっていない。このスライドはUK Research and Innovation (UKRI)という組織がまとめたもの。UKRIとは、

UK Research and Innovation (UKRI) is a non-departmental public body of the Government of the United Kingdom that directs research and innovation funding, funded through the science budget of the Department for Business, Energy, and Industrial Strategy.

UK Research and Innovation (UKRI) は、ビジネス、エネルギー、産業戦略省の科学予算を通じて研究とイノベーションの資金を管理する英国政府の非部門の公的機関です。

Wikipediaから一部引用、日本語訳はGoogle Translate

この地図はUKのQC関連の研究をしている大学のネットワークを表している。

“The UK National Quantum Technologies Programme (NQTP) “とは、

The UK is leading a global race to develop this new quantum era, forging its research strength into market opportunities through a co-ordinated and coherent National Quantum Technologies Programme (NQTP).

This represents a vibrant, visionary £1 billion partnership between government, academia and industry, one that is fast-tracking quantum knowledge from laboratory to wider society and economic impact.

英国は、調整された首尾一貫した国家量子技術プログラム (NQTP) を通じて市場機会への研究力を強化し、この新しい量子時代の開発に向けた世界的な競争をリードしています。

これは、政府、学界、産業界間の活気に満ちた先見性のある 10 億ポンドのパートナーシップを表しており、研究室からより広範な社会および経済的影響まで量子知識を迅速に追跡するものです。

UKRIの WEBページより一部引用、日本語訳はGoogle Translate

地図をみる限りScotlandにはあまりないように見えるが。

ちなみにポンドと円の交換レートはこのブログを書いている7月末で、1ポンドは約181円だ。1B(10億)ポンドは約18兆円だ。

QCに関する色々なイニシアチブやプログラムがある。

2018年から始まって2025年まで続くQC技術発展のゴールは”UK Quantum Technologies Challenge“としてまとめられている。実際のゴールのページは以下(同じ図がこのファイルの8ページに載っている)。

UKのQCにおけるスタートアップは以下のようだ。2022年のデータでちと古いが。残念ながら、日本のデータを調査し切れていない。でも、多分UKの方が多いだろう。いつ「もの」になるかわからないQC、やたら難しくて人材を集め切れないQC。どう考えても日本に今いっぱいスタートアップがあるとは思えない。

今回Q2B Tokyoに参加したUKベースの(スタートアップ)会社は、

ところで、UKのQC関連のEcosystem・Comminityと言うと。

では、誰が投資しているのだろう。投資という点では、国別で言うとやはり米国が一番多い。

外国籍の会社も英国でQCビジネスを展開している。米国の著名なQCのRigetti社やInfleqtion社などをはじめ、日本の東芝も暗号化などの暗号鍵などのビジネスを英国で展開している。

更に英国では、Department for Science, Innovation and Technology(DSIT)が今年2月に新たに設立された。その使命は、

Driving innovation that will deliver improved public services, create new better-paid jobs and grow the economy.

DSIT is a ministerial department, supported by 15 agencies and public bodies.

イノベーションを推進することで公共サービスを改善し、より高賃金の新しい仕事を創出し、経済を成長させます。DSIT は省庁であり、15 の政府機関や公共団体によってサポートされています。

DSITのウエブページより引用。日本語訳はGoogle Translate

2023年から10年に渡ってのUKでの技術戦略を定めたものが今年の3月にDSITから発表された。”The UK’s International Technology Strategy“というタイトルだ。以下の6つの分野に特化されている。

QCもこの中に入っている。英国がQCを重要視していることがわかる。QCに特化したドキュメントは同じDSITから発行されている。タイトルは”National Quantum Strategy“。内容は、

A 10-year vision and actions for the UK to be a leading quantum-enabled economy, recognising the importance of quantum technologies for the UK’s prosperity and security.

英国が量子対応経済のリーダーとなるための 10 年間のビジョンと行動。

UK DSIT WEBページより一部引用、日本語訳はGoogle Translateによる

ここまで読んで、「もっとUKのQCの動きを知りたいわ」という人には今年11月2日のNational Quantum Technologies Showcase 2023をお勧め。残念ながら、開催はロンドンで。

最後にもっとNational Quantum Technologies Showcase 2023やUK QCの活動に興味のある人は以下にご連絡を。