量子コンピュータ(QC)では高望みせず、小さなことからこつこつと!!
TechCrunchに寄稿した記事の中で、Quantum Briliance社 のMark Mattingley-Scott(GM)氏と
とMarcus Doherty(CSO)氏
は面白いことを提言している。もちろん、この2人が所属するQuantum Brilliance社の方向を強調したものだが。
滅茶苦茶簡単にまとめると、Quantum Supremacy(量子超越性)やQuantum Advantage(量子優越性)は達成できると素晴らしい。しかし、達成までに10-20年掛かるのでは、市場がもたない。投資家もそんな長期にしか展望がないものに投資続けるのは困難だ。古典コンピュータでは、真空管から徐々に発展して行った。どうして、QCでも同じ方式がとれないのか。バカでかくて、高価なメインフレームのQCを設置して使用するか、そのメインフレームにクラウドでアクセスという今の2つの方式の他に、発想を変えて手近に設置できる小型のQCの装置から始めて徐々に性能をあげて行けばよいのだと主張する。
Quantum Supremacy と Quantum Advantage
量子超越性(Quantum Supremacy):プログラム可能な量子デバイスが、どの様な古典コンピュータでも実用的な時間では解決できない問題を解決できることを(問題の有用性に関係なく)証明することである。
量子優位性 (Quantum Advantage) は、量子デバイスが古典コンピュータよりも速く問題を解決できることを表す。
Quantum Supremacy に関しては、Googleが達成したと発表したが、その後IBMがSupercomputerをもっと調整すれば、かなり性能をあげることができて、Googleの主張は当たらないと発表したりで、なかなか騒がしい。また、最近は中国の研究者が論文を発表して、更に調整をしてSupercomputerでほとんどGoogleの結果に劣らない結果を出したと主張していると@snuffkinさん(つかの@未踏「量子コンピュータ・クラウド」)が教えてくれた。もっとも、この論文は査読以前のものであり、またこれを検証するにはSupercomputerにアクセスでき、なおかつかなりの専門知識を必要とするので、とても筆者には検証できない。しかし、結果が正しければそのうち誰かが検証するのだろう。
Google の QC Supremacy
Google社は2019年10月にQuantum Supremacy(量子超越性)を達成したとNature誌に発表した。詳細は略すが、QCで200秒で出来た計算が、Supercomputerだと10,000年掛かるというものだ。この発表に対して、IBMはこの主張に反論して、Supercomputerをちゃんと調整すれば、10,000年ではなくて、2.5日で達成できると述べた。
最近の中国の査読以前の論文では、更に、調整すれば、304秒で可能になったとか。検証前なんでなんとも言えないが、もしこの結果が正しければ、200秒と304秒の差程度ではQuantum Supremacyを主張できないだろう。
古典のCPU、GPUやFPGAに勝つ程度の小型のQCマシンつくって、徐々に性能上昇させていかないと、「量子超越性・優位性の達成は10-20年先のことです。」と言われて、「はいそうですか。」といって一般の人の関心が続くだろうか、また、比較的短期の投資の回収を求める投資家にはそっぽを向かれてしまう。一般の関心も続かなくて、投資家がそっぽを向く。まさしく、それは冬の時代の到来となる。それでは、もともこうもない。Quantum SupremacyやQuantum Advantageを初めから求めると、100点満点で、0点になってしまう。このQuantum Brilliance社の2人の主張は0点ではなく1点からでも良いので始めて、少しでも古典コンピュータに勝つことのできるように、具体的に進歩を実現でき、かつ手元におけるユーティリティのQCのシステムを開発しようというものだ。
Quantum Brilliance社の製品に関しては、このblogでは詳しく触れないが、Qubitは現在主流なものではなくダイアモンドの結晶のなかの欠陥を利用する。特徴は
- 絶対0度を必要としない
- 複雑なレーザーシステムを必要としない
- 使用のための参入障壁が低い
- on premiseで設置できる
この会社はオーストラリアとドイツに拠点を置いている。米国の会社でないことも、こういった新たな視点でQCをみることと関係あるのだろうかと思ったりする。