QC:金融業界のQ2B Tokyo 2023 パネル
QCの応用分野と言うと、量子化学計算とよく言われるが、実は金融業界もその財力を駆使て研究・開発が盛んである。ちょうど金融のパネルがあったので、参加してみた。
モデレータとパネリストは上の紹介スライドの順番に着席
(横道に入るモードオン)このパネルの参加者の構成をみたときぴんときた。QIIというものが設立された。下の箱を参照。このメンバーの中で、金融関係というとこの3銀行がパネリストでモデレータは慶応。HSBCの関係はよくわからないが以下の関係かと思う。IBMはQII協議会のメンバーとなっている。また、QIIのメンバーはIBM Quantum Networkのメンバーになる。HSBCは英国ベースの会社だが、IBM Quantum Networkのメンバーである。ということで接点があったのだろう。 後で引用する記事でも、HSBCはGoldman SachsやJP Morganと共に一番QCの金融業界への応用という点では進んでいる。日本の3行と慶応は共同の研究をしている。これは、伊藤慶応大学塾長の基調講演より明らかだ。塾長があげた論文の1部:
- 金融業界のリスク評価:2021年から2023年、慶応、みずほ、三菱UFJ、IBM
- 金融業界の財務指標:2022年、慶応、みずほ、IBM、MUFG、Sony、三井住友信託
これらの関係からこのパネルが組まれたのだろう。
量子イノベーションイニシアティブ協議会(QII協議会)
2019年12月19日に、東京大学とIBMは「Japan IBM Quantum Partnership」の設立に向け検討を開始することを発表しました[6]。その目的は、「日本の量子コンピューティング・コミュニティを拡大するとともに、新たな経済的機会を育成すること」にあります。そして、IBMの量子コンピューターを日本国内のIBM拠点に設置する予定であることが表明されました。
2020年7月30日には、上記Partnershipに基づき、東京大学とIBMが量子イノベーションイニシアティブ協議会(QII協議会)設立に向け連携することが発表されました[7] 。QII協議会は東京大学を拠点とし、慶應義塾大学、東芝、日立製作所、みずほフィナンシャルグループ、三菱UFJフィナンシャル・グループ、JSR、DIC、トヨタ自動車、三菱ケミカル、日本IBMの10団体が参画の検討を開始することを表明しました。そして実際、2021年1月27日には、上記団体に、ソニー、三井住友信託銀行、横河電機、の3社も加わり、総会が開かれ協議会が設立されました。日本にやってくる実機を活用するのはこのQII協議会のメンバーたちということになります。
2019年12月19日に、東京大学とIBMは「Japan IBM Quantum Partnership」の設立に向け検討を開始することを発表しました[6]。その目的は、「日本の量子コンピューティング・コミュニティを拡大するとともに、新たな経済的機会を育成すること」にあります。そして、IBMの量子コンピューターを日本国内のIBM拠点に設置する予定であることが表明されました。
2020年7月30日には、上記Partnershipに基づき、東京大学とIBMが量子イノベーションイニシアティブ協議会(QII協議会)設立に向け連携することが発表されました[7] 。QII協議会は東京大学を拠点とし、慶應義塾大学、東芝、日立製作所、みずほフィナンシャルグループ、三菱UFJフィナンシャル・グループ、JSR、DIC、トヨタ自動車、三菱ケミカル、日本IBMの10団体が参画の検討を開始することを表明しました。そして実際、2021年1月27日には、上記団体に、ソニー、三井住友信託銀行、横河電機、の3社も加わり、総会が開かれ協議会が設立されました。日本にやってくる実機を活用するのはこのQII協議会のメンバーたちということになります。
そして、2021年3月23日に、実機の設置場所が「新川崎・創造のもり かわさき新産業創造センター」 となったことが発表されました[8]。センターにはIBM東京基礎研究所のサイエンス&テクノロジー・グループの拠点があります。実機の稼働は年内を予定しています。
IBMのページから、一部抜粋。
一方、米国ではGoldman SachsとJP Morganがそれぞれ証券・銀行・金融業が中心のはずだが、QCの研究部隊を持っておりIBMやこのコンファレンスの共同主催者のQCWareなどとQCの金融への応用の研究・開発を行っている。
「金融サービス部門は間違いなく(QCの)初期導入者であると思います」と、(IBMは)さまざまな大手銀行機関の研究チームとの協力に多くの時間を費やしているとウールナー氏は言う。 チューリッヒのIBM施設を事実上、大手銀行との業務を指揮する一種のフォワード営業基地に変え、同社は過去5年間、さまざまな時点でバークレイズ、HSBC、Goldman Sachs、JP Morgan・Chaseと協力してきた。 近年、これらのコラボレーションは純粋に実験的なものから、商用アプリケーションがすぐそこまで来ているように見える、よりグレーな領域に移行しています。
Techmonitor社の記事の日本語訳(google translate)の一部を引用 (。。)は筆者が前後の意味を正しく伝えるために挿入。
他の分野でもそうかもしれないが、金融の分野へのQCの応用は非常に多岐に渡っている。Boston Consulting Group(BCG) のスライドを引用するが、非常に多い。ユースケースは14にのぼっている。
同じ日のBoston Consulting Group(BCG)の渡辺英徳氏のスライド
これだけ、金融業へのQCのUse Caseをギュッとまとめたものはみたことがない。これからもわかるように、非常に金融というのはQCに関しては、お菓子売り場(?)。これを見れば、なぜ金融業界がQCに興味を持つのかは自明だろう。これらのUse Caseは比較的機能レベルの分類だが、最近筆者が興味を持っているのは、Monte Carlo計算へのQCの応用だ。QCを応用することでMonte Carlo計算の計算量劇的に減少するという論文がQCWareとGoldman Sachsから発表されている。(以前書いた筆者のブログでもう少しその辺を詳しく説明している。)その他、Q2B Silicon Valley 2022年のコンファレンスでHyperion ResearchのBob Sorensen 氏はQCの応用分野を分けるときに、シミュレーション、最適化、機械学習、暗号化のほかにMonte Carlo計算を含めたくらいだ。
さて、ここまで読んできた奇特な皆さん、一体いつになったら、パネルの話に戻るんだとお思いでしょう。筆者も横道に飽きたので、突然戻ります。(横道に入るモード オフ)
これだけ横道に外れたのも、実は、このパネルの前半の録音がうまくいかず後半の20分だけがあったからだ。
このコンファレンスは完全に2ヶ国語で行われており、同時通訳の器械が借り出されており、同時通訳が可能だ。筆者は米国45年ということはあるが、日本にいるとあまり英語に触れることが無くなった。そのため、VPNを屈指してYoutubeの映画やドラマを見ている。明らかにこのパネルでは、HSBCからの人以外は全員日本語で喋っている。この同時通訳器械ear phoneは無線だったのね。知らないから、HSBCからの人(Metcalf氏は米国人)も殆ど会話に反応しないから、何やら変だと思ってたけど、ちゃんと話を振られると応答してた。というようなどうでも良いことはさておき、後半の話での論点を幾つか箇条書きで。
- Metcalf氏以外は元々金融屋さんで、銀行業務には精通している。 Metcalf氏は量子情報分野出身で、銀行業務に慣れるのに苦労したそうだ。銀行マンのみなもQCを習得するのに苦労したそうだ。今後は銀行とQCどちらにも精通する人材が必要だ。
- QCは高価で誰でも自社に導入して使えるわけではない。そのため、データをQCのある所へ移動する必要が出てくる。今は研究・開発的な要素が多いので、既に公になっているデータや人工的に作ったデータを扱うことが大部分だからあまり問題がない。QCが進歩して、本当のデータをやり取りするその時、データのセキュリティが問題となる。もし、これが国の境をこえるようになると非常に厄介だ。
- 更に、銀行業務というのは、「valiadtion・verification」ということが非常に大切でQCが出力したものが正式に認められるようにするにはかなりハードルが高い。監督官庁がQCの技術を理解してその応用に関して何らかの規則や法律を定める必要がある。それには、かなりの時間がかかるだろう。
- Metcalf氏は日本と米国の企業間の協業などについて大きく異なると述べた。日本の場合最初に慶応大学が音頭をとって、量子コンピュータセンターを構築して、クラウド経由とは言え最初に実機に触れることの機会を提供したが、QCへのアクセスは限られてる。そのため、そこに集まる企業は協業せざる得なかった。また、日本の企業は経産省からの指導で協業に慣れてる。米国は同じ業種の企業が協業するのは稀。(一方が他方を買収でもしなければ)。Metcalf氏は学ばなければならない所かもしれないと述べた。
- QCの金融への応用促進には、技術的な問題より、QCに関する規制や法律がしっかりと制定されなければならないという感を強くした。技術的な問題は、時間を掛ければ解決できるが、それ以外はなかなか時間だけかけても解決するかわからない。
いかん、ブログの流れが全く制御できていない。まあ、この辺でやめておく。金融分野は、規模が大きいのと皆に影響が大きいことを除いても、Use Caseの宝庫なので、今後も注視していく。