量子アルゴリズム VQE(Variational Quantum Eigensolver)
Variational Quantum Eigensolver(変分量子固有値ソルバー、以下VQEと記す)は、量子コンピュータで効率的に記述できる量子状態を用いて基底状態を探索するアルゴリズムです。
ここでは、Quantum Native Dojo のVQEの項を、まとめてみます。
分子や物質の性質は、電子の動きによって決まっていると考えられて、電子を支配する方程式であるシュレディンガー方程式 $H|ψ⟩=E|ψ⟩$ を解くと、分子や物質の性質を計算によって明らかにすることができます。
ここで $H$ はハミルトニアンと呼ばれる演算子 (行列) であり、分子の形など、系の詳細によって決まります。 シュレディンガー方程式を解くということは、ハミルトニアン $H$ の固有値問題を解き、固有値 $E$ と対応する固有ベクトル (固有状態とも呼ばれる) $|ϕ_i⟩$を求めることと同じです。このとき固有値 $E_i$ は、固有状態 $|ϕ_i⟩$の持つエネルギーとなります。
この問題をとくことは量子化学計算と呼ばれていて、電子の数に対して指数的に難しくなるため、厳密に解くことは実質不可能になります。そこで様々な近似解法が研究されています。この問題の難しさは、粒子数が多くなればその次元が指数的に大きくなっていくことです。
電子の状態は通常一番エネルギーの低い状態、すなわち基底状態にあることがほとんどです。
変分法では、任意の状態 $|ψ⟩$ についてそのエネルギー期待値が必ず基底エネルギー $E_0$ よりも高くなることを使います。
$$⟨ψ|H|ψ⟩≥E_0$$
ランダムに状態 ${|ψi⟩}$ をたくさん持ってきて、その中で一番エネルギーが低い状態を見つけて、それを、基底状態に近い状態であると考えるというのが、VQE です。
状態をランダムにもってきたのでは、基底状態が得られる確率が低くなるので、物理的・化学的直観や経験をもとにパラメータ付きの量子状態 $|ψ(θ)⟩$を用いて、
$$⟨ψ(θ)|H|ψ(θ)⟩$$
を最小化する$\theta$ を見つけようとういうものです。
- 量子コンピュータ上で量子状態 $|ψ(θ)⟩$ を生成する。
- $ ⟨H(θ)⟩=⟨ψ(θ)|H|ψ(θ)⟩$ を測定する。
- 測定結果をもとに、古典コンピュータによって $⟨ψ(θ)|H|ψ(θ)⟩$ が小さくなるような $θ$ を決定する。
これを $⟨ψ(θ)|H|ψ(θ)⟩$ が収束するまで繰り返します。
参考文献