Google Antigravity Skills

Google AntigravityはGoogleの「エージェント型IDE」であり、SkillsはそのAIエージェントの能力を拡張するための軽量でオープンなフォーマットです。

最も重要な概念は、すべての情報を一度に読み込ませるのではなく、必要なときに必要な能力だけを呼び出す「段階的開示(Progressive Disclosure)」というアーキテクチャにあります。

なぜ「Skills」が必要なのか?

現代のAIエージェントは多機能化していますが、すべてのコードベースやツールを無差別にコンテキストに詰め込むと、以下の問題が発生します。

  • コンテキストの飽和(Context Saturation): 40〜50kトークンもの未使用ツールをメモリに置くと、遅延が発生し、コストが増大します。
  • 精度の低下: 無関係なデータによってモデルが混乱する「コンテキストの腐敗(context rot)」が起こります。

解決策: Skillsは、最初は軽量な「メタデータ(メニュー)」のみをエージェントに見せます。ユーザーの意図が特定のスキルと一致したときだけ、重たい手順書やスクリプトを読み込むことで、コンテキストを軽量・高速に保ちます。

Skillsの仕組みと構造

Skillsは、単なるプロンプトではなく、「定義ファイル」と「実行資産(スクリプト等)」のパッケージです。

  • ディレクトリ構造:
    • SKILL.md: スキルの「脳」となる定義ファイル。
    • scripts/: PythonやBashなどの実行スクリプト(オプション)。
    • references/: テンプレートやドキュメント(オプション)。
  • SKILL.mdの役割:
    • Frontmatter (YAML): エージェントがユーザーの意図とマッチングさせるためのメタデータ(descriptionがトリガーとして機能)。
    • Body (Markdown): 実際に読み込まれる詳細な手順、例、制約事項。

他の機能との違い

Skillsは、MCP(Model Context Protocol)やワークフローとは異なる独自の役割を持っています。

機能役割と特徴
Skills「脳(Brains)」。ツールの使い方や手順を定義する軽量で一時的なタスク定義。エージェントが自律的にトリガーします。
MCP「手(Hands)」。GitHubやPostgresなど外部システムへの永続的な接続を提供するインフラ。
Workflowsユーザーが特定のコマンド(例: /test)で起動するマクロ。対してSkillsは文脈から自動で起動します。

Skillsの実装パターン(5つのレベル)

資料では、Skillsの活用方法として以下の5つのパターンが紹介されています。

  1. 基本ルーター(The Basic Router)
    • 例: Gitコミットフォーマッター
    • 概要: 「Conventional Commits」のような規約を強制します。ユーザーが「コミットして」と言うだけで、自動的に規約に沿ったメッセージを作成させます。
  2. アセット活用(Asset Utilization)
    • 例: ライセンスヘッダーの追加
    • 概要: 長い定型文(Apache 2.0ライセンス等)をプロンプトに含めるのではなく、外部ファイルから読み込んで適用させ、トークンを節約します。
  3. 例示による学習(Learning by Example)
    • 例: JSONからPydanticへの変換
    • 概要: 複雑なルールを言葉で説明する代わりに、入力と出力の「ゴールデンサンプル」を見せることで、スタイルや型推論を正確に行わせます(Few-Shot学習)。
  4. 手続き的ロジック(Procedural Logic / Tool Use)
    • 例: DBスキーマバリデータ
    • 概要: 「DROP TABLE禁止」などの安全確認をLLMの確率的な判断に任せず、Pythonスクリプトを実行させて確実な検証(True/False)を行います。
  5. アーキテクト(The Architect)
    • 例: ツール作成の足場組み(Scaffolding)
    • 概要: 上記のすべて(スクリプトによるファイル生成、テンプレート利用、例示による実装)を組み合わせ、複雑な新しいツール作成タスクを一括で処理します。

まとめ

Google Antigravity Skillsは、エージェントを「汎用的なプログラマー」から、組織のベストプラクティスや安全基準を遵守する「スペシャリスト」に変える仕組みです。 プロジェクト固有(Workspace Scope)またはユーザー全体(Global Scope)で定義でき、必要なときだけ能力を「装備(equip)」させることで、効率的かつ高精度な開発支援を実現します。


Claude Code SKILL と Google Antigravity Skills の違い

Claude Code と Google Antigravity の「Skills(スキル)」は、どちらも AI に特定の知識や手順、道具の使い方を教え込むための拡張機能 ですが、動作する環境や目的、そして「誰が主導権を握るか」に細かな違いがあります。

2026年現在の開発シーンにおいて、両者の違いをまとめました。


共通点:Agent Skills オープン標準

実は、両者の「Skills」は Agent Skills というオープンな標準規格(SKILL.md を中心とした構造)に基づいて設計されています。そのため、一方で作ったスキルをもう一方で再利用することが比較的容易です。

  • 構成: SKILL.md(指示書)+ 関連スクリプト + テンプレート。
  • 動的読み込み: 常に読み込むのではなく、必要に応じて AI が自動で判断して読み込みます。

Claude Code SKILLS vs Google Antigravity Skills

特徴Claude Code SKILLSGoogle Antigravity Skills
主な目的「手順の標準化」。特定のライブラリや規約に従ったコーディングを AI に教える。「機能の自律化」。AI が自分でターミナルやブラウザを操作してタスクを完結させる。
実行主体ユーザーと Claude の対話。自律的な AI エージェント(Manager)。
得意なこと複雑なリファクタリング、コーディング規約の徹底、MCPツールとの高度な連携。ブラウザ操作を含むエンドツーエンドのテスト、自動デプロイ、並行作業。
セキュリティ実行前に都度許可を求めるスタイルが基本。信頼できるスキルに「自動実行(Auto)」権限を与えることが可能。
ファイル名SKILL.mdSKILL.md

各ツールの「スキル」の活用イメージ

1. Claude Code の「スキル」

Claude Code は 「賢いエンジニアの脳を拡張する」 ツールです。

  • 例: rails-migration.md というスキルを作り、「マイグレーションファイルを作る時は必ずこの命名規則を守り、アノテーションを更新すること」と定義します。
  • メリット: Claude の巨大なコンテキスト(200k+)を節約しつつ、必要な時だけ「プロの作法」を引き出せます。

2. Google Antigravity の「スキル」

Antigravity は 「自動で動くエージェントチーム」 です。

  • 例: e2e-test-fix.md というスキルを作り、「テストが落ちたらブラウザを立ち上げて原因を特定し、コードを直して再テストせよ」という一連の自律アクションを定義します。
  • メリット: スキルに ブラウザ操作権限スクリプト実行権限 をセットにできるため、人間が寝ている間に「バグを見つけて直して報告する」といった完結型のタスクが得意です。

結論:どっちのスキルを重視すべき?

  • Claude Code SKILLS は、「自分のコードの質を上げたい」「特定の書き方を AI に叩き込みたい」 という職人気質の開発に向いています。
  • Google Antigravity Skills は、「面倒な作業を丸投げしたい」「AI にエージェントとして自律的に動いてほしい」 という自動化・効率化重視の開発に向いています。
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