量子コンピュータの本のリビュー
Blueqat社のCEOの湊雄一郎氏から最新の本を頂いたので、読んでみた。タイトルは「先読み!IT×ビジネス講座 量子コンピューター 単行本」リビュー記事も書いてみた。量子コンピュータの本は何冊も出版されており、初心者から中級・上級者用のものもある。湊氏は以前「いちばんやさしい量子コンピューターの教本 人気講師が教える世界が注目する最新テクノロジー」という本を出している。この本はコロナ禍で、多くの人がどこへも行けない時に読むようにとかで、期間を切って無料でオンラインで読めた。確かに、初心者用の量子コンピュータの本だった。初心者用とはいえ、モロの文系で数学や物理を全然やってない人が読んでふむふむとはいかないレベルだった。筆者は素人に2本毛が生えた程度だったのでかろうじて。。。。。
湊雄一郎氏、ご本人のYoutubeより
(与太モードオン:大学授業の時一度だけ量子力学の時間があり、ちんぷんカンプンだったことを覚えている。その時同じ授業を聞いていた同級生が将来量子力学の学者になろうとは、人生は不思議なものだ。与太モードオフ)
湊氏の現在までの量子コンピュータの本
今でに出版された本の一覧(含:共著)
- いちばんやさしい量子コンピューターの教本 人気講師が教える世界が注目する最新テクノロジー (「いちばんやさしい教本」シリーズ) – 2019年
- みんなの量子コンピュータ – 2020年 共著
- IBM Quantumで学ぶ量子コンピュータ – 2021年 共著
「先読み!IT×ビジネス講座 量子コンピューター」
今度の本のタイトルは「先読み!IT×ビジネス講座 量子コンピューター」ご自身によるとこの本は更にもっと基本的な情報を含んでいるとのことだ。では、中身はどうだろう。
基本的情報
- タイトル:先読み!IT×ビジネス講座 量子コンピューター
- 発行日:2023年8月11日
- 著者:湊雄一郎、酒井麻里子
- ページ数:174ページ
- 5章からなる。
- 1章:量子コンピュータの何がすごいの?
- 2章:知れば知るほど面白い「量子」の世界
- 3章:量子コンピュータの仕組みを理解する
- 4章:活用が期待される産業分野を知ろう
- 5章:量子コンピュータを体験しよう
- 構成:酒井氏が湊氏に質問して、湊氏がそれに答えるという体裁になっている。
感想
- 本の最初に書かれているように、この本を読むのに、化学、物理、数学、量子力学の知識はいらない。
- 筆者が考えつく限りの量子コンピュータに関する項目が全て取り上げられており、説明は平易で分かりやすい。とっつきにくい話題を酒井氏が普通の人目線で質問して、それを湊氏が専門的過ぎないレベルで回答している。
- 各所に簡単にイメージを掴みやすくなる工夫が凝らしてある。ご両人の顔イラスト(表情入り)をつけることや、説明を直感的に分かりやすくするため(Hゲートをコインを回す機能とか)や回路の概念を音符に例えたり等だ。
それぞれの質問と回答に関して、その内容に応じて表情がイラストで表されている。出典:上記の本より
- 褒めすぎるだけだと本を貰ったのだから褒めてるんだろうとか、知人だから評価が甘いと言われるのは本意ではないので、少し思うところを2つばかり。
- このコメントは、アナリスト的な職業病なので、「じゃあどうするねん」と言われるとちと困るが。4章で量子コンピュータの活用・応用される産業分野で、材料化学計算、最適化計算、金融計算、暗号、機械学習となっている。このうち、材料化学計算と金融計算は、産業分野ではあるが、最適化計算、暗号、機械学習は産業分野というよりは機能分野だ。この3つは多くの産業分野に水平的に応用される。例えば、最適化計算、暗号、機械学習は金融計算にも応用される。実は、この分類をするのは非常に難しい。筆者はCQ出版のInterface 2023年9月号に寄稿して、機能分野と産業分野を分けて分類した。産業分野は数が多すぎるので、まず機能分野を、量子(世界の)シミュレーション、最適化、暗号、機械学習、モンテカルロ・シミュレーションの5つに分類して、それぞれの機能がどのような産業に適用されるかを具体的な企業の名前と共に提供した。しかし、この分類は湊氏が対象としている読者層には明らかに詳細過ぎるので、適当ではない。そうなると湊氏の分類で良いのか。。。。。
- 確かに最低知っていれば量子コンピュータを理解することに必要なことはよくまとまって提供されている。しかし、全くなんの数学、物理、化学、コンピュータの背景がない人が170ページ以上の本をスラスラ読めるかというと、ちと疑問。特に、最終の章(これは感覚を得るために絶対必要だけど)を全く誰も聞けない状況で読んでわかるかというとちと疑問。この解決法は次のセクションに提案。
- まとめると、もしあなたが文系で数学、物理、化学、そして数式にアレルギー(筆者のように)あるのなら、「量子コンピュータとはなんぞや」と短時間で理解したいなら、お勧めの本。なお5章は飛ばしても良いかも。この本の次は、「いちばんやさしい量子コンピューターの教本 人気講師が教える世界が注目する最新テクノロジー (「いちばんやさしい教本」シリーズ)」をお勧めする。
この本をどう使うか?
筆者は2時間ほどで読んだが、多少とも「量子コンピュータ」に耐性があるのでできるが、全くの素人に一人で全部読めというのはちとしんどいかも。もし、あなたが会社の管理職で、自分の会社にとって量子コンピュータを理解しておかないと思ったのなら、まず、部下で理系もしくは理系的な文系で物理、数学、化学、コンピュータの素養のある人に本を渡して読んでもらい。その後、数名のグループを組織して輪読するをお勧め。グループのリーダは最初に本を読んで理解した人。週に1−2回集まってやれば、2週間もあれば終わる。