量子業界が掲げるビジョンと苦悩、by 楊天人氏、CEO Qunasys
Q2B2日目の最初は楊天人氏による基調講演だった。ただ、講演を全体でまとめても面白くないので、筆者が面白いと思ったことを適当にまとめる。このブログ多分短めかなあ。そう、この時点では、どう料理するか決めてない。
まず、何Qubitあればどれだけのことができるのかは興味がある。最低でも100万qubitなければ役立つことはできないと言われている。それを次のスライドで。年月を追ってビット数の増加と実用応用を示している。
次にそれぞれの産業にQCの優位性が応用された場合のタイミングとその経済的なインパクトと示したスライド。元々は、BCGのスライドだ。2021年にBCGが発表した記事はなかなかインパクトのあるものだった。筆者はそれを読んでブログにまとめてある。
この図だと、右上の量子化学計算が、短期間でしかも経済的に一番有効であると示している。Qunasysがこのデータを使いたいのは理解できる。Qunasysは短期間でQCが影響を一番与える分野に特化しているからだ。つまり量子化学計算。一番時間がかかって経済的インパクトが少ないのはエネルギーやロジスティック分野だ。これは、ラフに言えば、最適化の分野とも言える。QCの適用分野で最適化はよく言われるけれど、ある特殊な場合を除いて、最適化はなかなか難しい適用分野だ。他に特記できるのは、創薬などの薬の分野。経済的なインパクトは大きいが、時間が掛かる。同様に時間が掛かるが、経済的インパクトがそれなりあるのは、サイバー空間のセキュリティだ。当然暗号なども入るだろう。こういうものはどのように分類するかによるが、はっきりと金融分野を切り出していないのが若干不満である。金融分野の経済的インパクトは一番大きいからだ。もっとも金融は、暗号、最適化、シミュレーションなど機能を含むので、この図には書き込みづらいのかもしれない。
QCの性能を測るmetricは
3つの指標は、それぞれ、1。スケール(Qubitの数)、2。品質(Quantum Volume、回路の品質とどれだけハード上で回路が実装されているか)、3スピード(Circuit Layer Operations per Second、CLOPS、1秒間にどれだけハードウエア上で回路を実行できるか)。こういった指標は年ごとに進歩が見られる。
ビジョンの次に、QCに関してそれぞれの立場から見た苦悩をあげてみる。まず最初は、managementからみた場合
上から、「興味はあるが、自分のビジネスのどこに適用されるのかわからん。」、「上や投資家に何で量子をやるのが良いのか説明できない。」「どれだけインパクトがあるのかイマイチわからん。効果が出てくるのは中長期なんではっきりとした数字を示せない。」まことにごもっともな話だ。(余談モード オン:筆者はソフトウエア協会のボランティをしていて、AI技術委員会がQCの登場でAI/QC技術委員会になったが、まさにこの理由でぽしゃった。余談モード オフ)
次に、研究者とエンジニアの悩み。
まず最初に、「QCには興味があるがどんな研究・開発がやる価値があるのかわからん。」そして、「一体QCの研究がどこまで進んでいて、どのくらい実際の産業に適用できるのかがわからん」そうだろうな、最先端の研究者が迷いながら、手探りで進んでいるのに、横からちょっと見てわかるわけないな。
続きは次のスライドで。
続きで、「QCの進歩ははっきりしないし、どんな進歩を遂げられのか数字で表すのが困難だ。」
確かに、全部あったってるけど、これだけを見たら、こんなブログを書かずにYoutubeで好きなビデオでも見ようかと思ってしまう。しかし、筆者は趣味でQCを見ているので、これだけ否定的な理由が貨物一杯あっても、昔、Mr. SpockがStar TrekのEnterpriseで言っていたように、QCは「Fascinating!!」だ。
最後に楊氏は地球環境を改善するSDGの量子版であるSDQの話をした。
はっきりした目標があり、地球環境の改善とその維持であれば、「なぜQCをやるのか」と言う質問の答えは明らかだろう。