Q2B東京2023年、伊藤公平先生の基調講演

基調講演は2つの部分から成り立っており、それぞれ、(1)日本政府の内閣府の量子技術の実用化推進ワーキンググループの話しと(2.)慶応大学の量子コンピュータの活動。

      伊藤公平先生の講演

        内閣府、量子技術イノベーション会議

        「量子技術イノベーション会議」の実用化推進WG主査という立場でその活動を報告した。プレゼン資料は元々日本語であったこれを英訳したもので行われた。

        このスライドを簡単にまとめると。日本語版のプレゼンを使う。

        ここでの感想を言うと、2030年の目標が大きすぎるのではないかと思う。現在の産業のコンセンサスは2030年頃にようやく初期のFTQCが出来始めて、まだQCが本調子で社会に貢献しないと思われている。この時期にこの目標はかなり厳しいと思うが。

        協業、利用環境へのアクセスとインキュベーションが3つの柱だと言うことで、全く異論はない。1社1機関だけでできる話ではないので、協業が大切なことは重要なことは間違いない。金融パネルで、みずほ、三菱UFJ,住友信託の協業の話を聞いた同じパネリストのHSBCの人が日本で協業出来ているのが新鮮に映ったと述べていた。パネリストは米国からの参加で、米国ではそれぞれが競合しており、いかにQCといえども協業はあり得ないと。

        米国に45年程度住んだ筆者は言わんとすることは感覚的にわかるけど、ある程度の協業は例えば、IBM Quantum Networkなどで見られると思う。企業を跨いだ論文の発表などもあったと思う。まあ、多分Goldman SacsとJP Morganだけの論文はなかったかもしれない。あっても、多分中立のIBMや研究機関・大学の共著者が含まれているだろうけど。まあ、深いところは知らないが日本は政府指導の協業が何年にも渡って続いており、これは問題なかろう。利用環境アクセスは例えば、理研がそのシステムを広く提供できれば、可能だろう。インキュベーションはこれからの課題かもしれない。

        利用環境へのアクセスという点では、前出のHSBCのパネリストは協業の違いのほか、QCへのアクセスが明らかに違うと指摘していた。HSBCでは、QCへのアクセスは問題なく、好きなだけ使える。まだ、日本ではQCへのアクセスが限られておりこの問題を解決することが急務だろう。理研の日本製のQCの可動で、この問題も解決されていくだろう。

        協業ということで、それぞれの機関に異なった機能を持たせることにしている。以下のスライドを参照。

        異なった図では。

        残りはスライド全体を見てね。これだけの大学や研究機関が協業しているのは頼もしい。理研のQIHの詳細はここから。前にも書いたけど、大阪大学の活躍が目立つ。

        慶応大学での量子コンピュータ活動

        慶応大学で2018年5月に日本最初の(IBMの)量子コンピュータにクラウド経由でアクセスが量子コンピューティングセンター(神奈川県矢上キャンパス)できるようになった。(IBM Qハブ)。この時点では、アジア初。記者会見での発表資料はここ。最初の参画する会社はJSR社、三菱UFJ銀行、みずほフィナンシャルグループ、三菱ケミカルの4社であった。

        ところで、最初のQC(IBM)の物理的な設置は東京大学であり、それは2021年の7月だった。

        伊藤先生のプレゼンは、慶応の量子コンピュータセンタで多くのメンバー会社との成果を挙げていた。塾長があげた研究成果は、

        • 金融業界のリスク評価:2021年から2023年、慶応、みずほ、三菱UFJ、IBM
        • 金融業界の財務指標:2022年、慶応、みずほ、IBM、MUFG、Sony、三井住友信託
        • AIへの応用:2021年から2023年、慶応、三菱ケミカル、東京大学、ニューサウスウエールズ大学
        • 材料設計:2023年、トヨタ、慶応、産総研、IBM
        • 化学業界:2023年、三菱ケミカル、IBM、慶応