量子コンピュータ(QC)に関する初歩的な質問3つにQCIのRebel Brown氏が答える

色々な題目でQCに関して書いてきた。共通のテーマはスポーツ新聞の見出しよりはΔくらい (lim Δ—> 0)詳しく、しかし、専門家からは見向きもされない素人レベル。

Rebel Brown氏はQCI (Quantum Computing Inc.) のVice President of Strategy & Marketingだ。

Rebel Brown氏 、出典 quantum Computing Inc.のWebより

最近の投稿で、以下の3つの基本的な質問に答えている。

  1. どのような問題がQCに適しているか?
  2. QCに到達するための最良の方法は?
  3. 古典とQCの一番大きな違いは?

まずそれぞれの彼女の論点を紹介して、コメントしてみたい。

1. どのような問題がQCに適しているか?

  • サプライ。チェーンとロジスティクス
    • 配送路の最適化、株式の組み合わせ最適化、天然ガスやオイルの供給最適化、空港でのスケジュール最適化
    • 一言でいうと、最適化 (optimization)
  • 生科学と製薬
    • 創薬や化学計算
    • 一言でいうと、シミュレーション (Simulation)
  • サイバー・セキュリティ
  • 政府と研究機関
    • 書いてあることは。上の3つの政府機関や研究機関での研究で、わざわざ新な項目をつくる意味がわからない。
    • 一言でいうと、上の3つは政府機関や研究機関で研究されている。

2. QCに到達するための最良の方法は?

まず最初にQCは計算部分しか現在はできない。つまり、トランスアクションの処理ができないし、ビジネスで必要とされるworkflowやアプリケーションも処理できない。そういったことは古典コンピュータに頼らざる得ない。しかし、QCが提供できる計算部分は古典コンピュータが絶対に到達できない処理速度で処理できる能力を秘めている。然るに、古典とQCを組み合わせて使用することが必須である。長期的にはわからないが短期的にはこの2つの組み合わせであるHybrid形で使用するのが、本筋であろう。

3. 古典とQCの一番大きな違いは?

根本的に異なるものだと思った方が良い。単に、真空管ベースからトランジスターに進化した時の違いどころではない。

古典コンピュータはバイナリーだ。常に1か0をの流れを追いかける、直列型の計算方法だ。並列の計算であってもそれぞれを計算した後直列でまとめあげる。QCの計算では、全てが複数の次元で起こる。しかも、それぞれのデータがある確率で1でもあり0でも同時に存在するのだ。この様な状況で計算が起こるのだが、全ては確率的に処理される。そして、最適解へと導いていく。

筆者のコメント

これを読んで、「はあ、成程」と分かる人はそうはいまい。1のQCの適用分野についてはあちこちで、議論されている。以前も筆者はその記事を引用してblogを書いている一般的に大きな括りでいえば、A) Simulation, B) Optimization, C) ML(機械学習), D) 暗号化である。Brown氏がMLを全然あげていないのは不可解であるが。まあ、MLが抜けている以外はその通りだと思う。

2のどの様にして、QCに到達するのかと言う質問に対する回答に特に異論はない。QCが実現されたら、古典コンピュータは無用の長物になるわけではない。少なくともかなり先の将来にわたるも。この辺りをちゃんと議論したり、解説したりしないので、QCだけでなんでも出来てしまうというような風潮があることは嘆かわしい。また、Brown氏ははっきりとは述べていないが、実は量子超越性どころか、量子優位性も完全に証明されたわけではない。その辺りは、筆者の以前のblogでAdam Bouland教授のYoutubeでのビデオ発表の解説のなかで述べた。

Adam Bouland教授

3の違いは何かという質問の回答は実は直観的ではない。うかっと聞いていると、「ふー-ん、そんなもんか」と思うけれど、実際に与えられた複数のQubitを数学的に表現して、ゲートを潜らせてalgorithmを適用して初めてこの説明が理解できる。筆者も最近ようやく直観的にわかる様になった。なかなか、奥が深い。