よろずQCのZen問答: 世界規模でみた現在の量子コンピューター市場を端的にまとめる (その2:クラウド)

これは、blueqat湊さんに啓発されたブログその2だ。

パブリッククラウドの市場も寡占が進んでおり、4強はSynergy Research Group によれば、AWS, Microsoft, Alibaba, Googleと言われている。ここでIBMは5位に転落している。

量子コンピュータはまだ価格が高いので、皆が自前の量子コンピュータを所有できるわけではない。また、量子コンピュータは古典コンピュータとhybridで使用されることも多いので、データセンターに設置し、クラウドを経由してアクセスするのが好都合である。そのような方式だと既にパブリッククラウドを展開している2強プラスGoogleが有利になってくる。しかも、上位3社のAmazon, Microsoft, Googleはそれぞれ量子コンピュータの解を所有している。量子クラウドに限れば、IBMが浮上してくる。

湊氏のブログは非常によくまとまって特に解説することはないが、競合状態を見て面白いのは、それぞれが、現在までの会社の成り立ちを反映していて興味深い。下のテーブルは氏の<OSS X Users Meeting> #30 ~ここから広がる量子コンピュータの世界~ 『量子コンピュータと量子機械学習の最新トレンド』で元のブログの改訂版だ。

IBMは全てを自前で揃える垂直型の戦略で、QC分野ではダントツの老舗だろう。但し、超電導型は今後どのように発展して行くのか、筆者は予想が困難である。超電導型に特化してトップを走ってきたので、違う方式には容易には変更できないだろう。Amazonは正式にはハードの開発は行わず、他社のハードをAWS経由で提供するという戦略だ。しかも、超電導型のRigetti、イオントラップ型のIonQ、アニーリングに強いD-Waveと異なった解を提供している。public cloudでダントツの強さを誇るAmazonがSDKであるBraketも提供してなかなか手強い感じだ。IBMとAmazonは既にサービスを公開している。

MicrosoftとGoogleは今年公開の予定だそうだ。Microsoftも自前のハードは持たずにAzure経由でIonQHoneywellのハードを利用するようだ。Quantum Circuitのハードを実際に使用するかはまだ不透明だ。この会社は1つの場所に多数の要素を詰めこむのではなく、legoのピースのように小さな部品を組み合わせて量子コンピュータを実現しようと言うものだ。しかし、未だに開発予定を発表していないので、何時完成するのか、完成してもMicrosoftがそれを採用するのかは不明だ。Microsoftはこの他Delft 大学のにmajorana 粒子を使用したTopological 形式のハードの研究を委託していた。2018年にNatureに論文を投稿してこの未知のmajoranaの存在を確認したと報告していた。しかし、その後、論文に誤りがあったとして今年2021年2月に取り消した

GoogleはIBMと同様、超電導方式だが、2019年9月に量子超越性を達成したと発表した。このQunasysが提供している量子コンピュータの記事は一読に値する。

「量子超越」は、量子コンピュータの歴史における大きな一歩である。Googleの研究チームは、最速のスーパーコンピュータを使っても1万年かかる問題を、Googleの53量子ビット(qubit)の量子コンピュータは10億倍速い、200秒で解けることを示したという。

「量子超越性」を示す上での重要なポイントは、「古典コンピュータよりも量子コンピュータが高速に計算できることを示せる問題であれば、我々の生活に何の役にも立たない問題設定でもよい」ということだ。そもそも、高速に問題が解けることを「示す」ことが重要なのであり、何かの問題を実際に「解く」必要さえない。

Googleが量子超越を達成 -新たな時代の幕開けへより

この主張にはIBMは大いに反論している。この記事も一読に値する。

量子研究のコミュニティがIBMの主張とグーグルの動きを精査するには、時間が必要になるだろう。ルイジアナ州立大学の教授であるジョナサン・ダウリングは、現時点ではIBMの主張に一理ありそうだと指摘する。ダウリングは、「グーグルは従来型のマシンでは解決が本当に難しいと思っていた問題を選びましたが、IBMはその問題がグーグルが思っていたほど難しい問題ではなかったことを実証しています」と説明する。

最終的に誰が正しいと証明されようとも、量子超越性とは現時点ではあくまで理論上の話にすぎない。超越性を示すためにコンピューターに与えられる問題には、実用性がなくてもいい。量子超越性は、量子分野において長きにわたる「夢」の実現を示唆するマイルストーンなのだ。すなわち、量子コンピューターが電池の化学技術や医療といった複雑な分野における進歩を可能にし、新たな力と利益をもたらすことを意味する。

 グーグルが主張する「量子超越性の実証」に、IBMが公然と反論した理由 より

超電導の方式ではIBMがダントツで果たして、もう一社必要であろうか。湊氏はテーブルの中でも、頻繁に発信しているビデオでもGoogleは量子AIの方向に向かっていると述べている。

まとめ

  • QCへのアクセスはクラウドを介するのが良い。
  • パブリッククラウドの2強プラスGoogleのほか、量子クラウドとなると、IBMが浮上
  • IBMは長年の研究と経験から超電導方式でダントツの強さ。
  • AmazonはそのAWSパブリッククラウドを利用して、ハードを持たずに超電導、イオントラップ形式、アニーリングの他社のハードを提供。また、Amazonは強力なSDKのAmazon Braketも提供している。
  • Microsoftはパブリッククラウド第2位のAzureを介して、Windowsコミュニティに強い。また、斬新なQC方式も試している。
  • Googleは量子超越性を発表した後、現在はtensorflow等を使用して量子AIに特化している。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です